概要
衛星データを用いて、国内外の道路の陥没発生箇所の地盤変動を、発生の約150日前から解析しました。Synspectiveの衛星データソリューション「Land Displacement Monitoring」(LDM)は地球上の任意の箇所に対して、遠隔かつ継続的に地表面・地盤のモニタリングを行い、地盤リスクを広域・面的に理解することが可能です。
さらに2021年4月に開発発表(*1)した「陥没領域抽出機能」によって、陥没が、”事前に起きそうな箇所”、”起きた箇所”、”起きた後進行している箇所”を把握する高度な解析が可能です。本機能は、空間的な変動と時間的な変動の特徴を掛け合わせ検出する独自の予測アルゴリズムを利用しています。
(*1 衛星データ活用による地盤陥没の予測を可能に: 「Land Displacement Monitoring」に 陥没の可能性箇所を特定する陥没領域抽出機能を開発)
想定活用場面
衛星データを解析することにより、トンネル工事等による地盤変動を数mm単位で把握することが可能であり、沈下の傾向を面的に時系列で分析することにより、陥没の予兆を検出します。それにより、一般市民にとっては生活域の安全性を把握することができ、工事事業者は未然の事故防止や工事の安全性担保に寄与します。また地盤変状箇所の点検費用や、被害軽減に有益な対策工事費用、工事の中断や遅延に伴い発生した追加費用等にかかる保険の構築も可能です。
解析結果
陥没が発生する地表面の力の加わり方を分解したところ、鉛直(真下)方向への沈下だけではなく、左右から水平方向にも力が加わり、陥没箇所に対して吸い寄せられるような変動が見られることが判明しました。この変動の特長をSynspective独自のアルゴリズムにて検出しています。
■国内事例
ある国内のトンネルシールド工事において、地上の地盤変動を解析しました。時系列データを見ると変動量がシールドマシン通過に伴い変化していることが分かります。シールドマシン通過時に微増しており、シールドマシンが通過する際に少々地表面が盛り上がる影響が見えています。
■海外事例
インドネシア・スラバヤの陥没事例の解析を行いました。×印の箇所が実際の陥没箇所、黄色の範囲が陥没リスクが高いと判別された地域です。約43日前から断続的に陥没箇所がリスクの高いエリアとして認識されております。
左側の解析結果が地盤の隆起、沈下を表したものであり、下の図が青矢印箇所の約1年間の沈下傾向をミリ単位で表したものです。右の拡大図を見ると分かるように、陥没の43日前から著しい沈下が発生していることが分かります。メリット
陥没事故の起こった現場の過去衛星データを解析することによって、時系列での変化を追った際に、特徴的な地盤の変動傾向を抽出することが出来ました。この解析技術を用いることで、以下のような用途でも役立てることが可能です。
- 地下トンネル工事に基づく地表面への影響監視
- 定常時の道路モニタリングの効率化、高度化
- 広域の陥没リスク箇所の事前検知
- 過去に発生した陥没事故の原因究明
- 地上施設への影響観測
- 常時監視によるアラートの発出
ソリューションの特徴
- 垂直/水平の四方向のミリオーダー級の変動傾向の解析が可能
- 複数現場を同時に広域監視し、過去から現在までの経年変化の把握可能
- InSAR解析技術システムの活用(日本初の空間的変動と時間的変動を掛け合わせた陥没可能性検出技術)
- 地盤変動解析の自動化による時間短縮
- 直感的なユーザーインターフェース
- PDFレポートでの出力